- 作者: 井寄奈美
- 出版社/メーカー: 中経出版
- 発売日: 2012/10/30
- メディア: 単行本
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普段、読まないことにしているタイトルの本がいくつかあります。ひとつは「○○はダメだ、危険だ、間違いだ」系の本。そしてもう一つが「○○しなさい」系の命令本。読んでもたいがい「ハズレ」な本であることを経験しているため、きっとターゲットが私とは違うのだろうと思うことにしています。
そんなわけで、この本も普段だったら手に取らない本なのですが、そこは井寄ブランド。中小企業の苦しくそして努力を重ねている現場をたくさん見ているからこその、愛情にあふれる、なにわの社労士さんです。
過去には『トラブルにならない・社員の正しい辞めさせ方給料の下げ方』というショッキングなタイトルの本で、私のまわりでも話題になりましたが、内容は「不誠実な人におかねをかけないで、そのぶんをしっかりと一所懸命にやっている人にまわそうよ」ということに軸が置かれている、実にあたたかいものです。
本書は、「不誠実な人」をさらに突き詰めて「非常識社員」を名付け、経営側が取るべき対策について述べている本です。
中小企業の経営者というのは、「これくらいわかってくれるだろう」「ここまでルール化しなくても常識的に対応してくれるに違いない」と、社員を「信じて」いる面があります。 しかし「非常識社員」は自らの利益のために、あるいは自らの感情の解決のためだけに、自分の持つ権利を最大限に主張してきます。(義務および責任と権利とはセットであるということは、明文化されていない限り「非常識社員」にとっては、まったく関係のないことなのです。権利は権利というのが彼らの主張)
経営側は、そんなことがないように普段から「きちんと」しておきましょう、理論武装しておきましょう、ということが、本書では具体例とともに幅広く紹介されています。
各章の内容と感情を一言であらわすと、こんな感じ。
1章:こんな自分勝手な奴らがおるんやで。はらたつわー。
2章:社員に色々言う前にまず最低限会社がやるべきこと、ちゃんとしよな。
3章:あと追加でこんなこと決めとくとええで。曖昧なのがいかんのや。
4章:いざ戦いが始まってしまったら落ち着き。そんでプロにまかせとき。
5章:そもそもだけどな、「いい会社」にしよや。非常識社員、居にくくなるで。
経営側が読んでも社員側が読んでも、ちゃんと知って、ちゃんと対応する(求める)ための知識がつく、わかりやすい本だと思います。
経営側は、まず自分の会社が社員に対して「当たり前の事を当たり前に」提供できているのかの確認ができることでしょう。
社員側も、多くの場合好き好んで「非常識社員」になろうとしているわけではないと思うので、自分がより良い環境で仕事をするために、自分のふるまいが「非常識社員」になっていないか、あるいは、会社というものがどういう観点で人を扱っているのかを知るために役に立つことでしょう。
命令形の本だけど、「会社」という場になんらかの関わりのあるすべての人に、本書をお薦めしたいと思います。
ところで表紙を見たとたんに「どこかで見た」感が強かったのですが、真っ赤な表紙に太ゴシックで「非常識」と書かれた、光文社の本(2011)でした。シンプルな手法なだけに、発想が同じだと結果も似てしまうものなのですね~。