
- 作者: 山田真哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/12/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者の方には失礼かもしれないけれども、私はこの手の本を読むときに、その内容が真実かどうかは、あまり気にしない。もし本当にそうだったら、面白いなぁ、とか、確かにつじつまはあう!美しい!などと、楽しみながら読めたら、それで良いと思っている。
読み手は気楽で勝手なもんだ。調査のために東奔西走されたであろう著者の方には申し訳ない。
という姿勢で読んだ本書。何事も物事には様々な側面があるのが自然であり、その一面のみを取り上げて英雄化したりダメ確定したりする事に対する違和感を、これまでも多く感じてきた。そういう意味では先日読んだ「ヒトラーの経済政策」は面白かったし(ただし、その本は経済政策の中でもさらに良い点だけしか見ないという徹底ぶりだったため、読後の違和感は免れなかったが)、可能であれば忠臣蔵の両家の、別の一面でのストーリーだって読んでみたいと思っている。ロッキード事件で悪徳政治家の印象が強い田中角栄でも、新潟に行ったときに氏が「これからはITですよ。ITで国が豊かになるんです」的なことを言っている動画を見て、こりゃすごいと思った。1970年代ですよ。何を分かってるのか知らないけど、この道具は有効だと感じる嗅覚。角栄氏がそんな台詞を吐いていたことを知る人はそう多くないと思うが、そんな面だってあるのだ。
話が逸れた。
本書はそんなわけで、「驕り、勘違いし、源氏にとっちめられた」と言われている平家について、著者ならではの調査に基づいて、想像を交えて紹介している。いやぁ、やはり世の中を動かしているのは、ひとりひとりの「ひと」なんだな、と実感する。
全体としては、さすが会計士さん、宋銭の存在を中心として話が展開されていきますが、掘り下げ方が心地よい。 「貿易をしたから儲かりました」みたいに、さも当たり前のように教科書に書かれている説明。なぜ貿易が儲かるのか。独占は簡単にできるものだったのか。少し考えれば次から次へと疑問が出てくる部分に、この本は切り込んでくれている。
著者が作り上げてくれた想像の世界の上に、さらに自分の想像を上塗りしながら、とても楽しく読めた一冊だった。
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