IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる
- 作者: スティーヴン・ベイカー,金山博・武田浩一(日本IBM東京基礎研究所),土屋 政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: 単行本
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先日、ClubDB2という定期勉強会でワトソンの話を聞く機会がありました。開催が決まってから、「とにかく当日までに読んでおきたい!」と買ったのが、この本です。
結局、当日の会場に向かう電車で最後の仕上げを!と思っていたところ、思いの外ゆったりと読んでしまい、最後20ページくらいを残しての勉強会参加となりましたが(笑)。
チェスの名人を破ったIBMのコンピュータ「ディープ・ブルー」の話を耳にしたことがある人は多いでしょう。ワトソンは、ディープブルー以後最大級の「対人間」の対戦を目的としたコンピュータです。
挑戦するのは「クイズ番組」。米国で人気の「ジョパディ!」という番組です。日本では類似番組が「クイズグランプリ」という名前で放送されていました。「文学歴史の40」とかいう、アレですね。
クイズ番組に解答するには、問題文が要求していることを的確に理解し(人なのかモノなのか年代なのか)、あらかじめ用意された的確なデータ群の中から候補を選定し、それらの中で正しそうなものをひとつ決定する、という流れが必要になります。
さらに、単なるひとつのテレビ番組への挑戦になるので利権も絡みまくり。利権というとイヤラシイ響きですが、番組側も、いままで積み上げてきた空気、ブランドといったものがありますから、それらを著しく壊すことは避けたいと考えるのは当然でしょう。
これらの、技術的、政治的な経過を、本書はそれぞれの面からしっかりと追っていて、プロジェクトの全貌(少なくともこの著者が伝えようとしている範囲で)を体験したような気分になれます。
どんなにひどいレベルから、何をして成功までたどり着いたのか。この「成功」は、どの程度の自信を持ってなされたのか。ここまでリアルに「ワトソン」プロジェクトを感じ取れる資料は、本書を置いてほかにはないでしょう。
「ワトソン」は現代のディープ・ブルーだと思います。ディープブルーが「歴史上のできごと」になったように、将来「歴史上のできごと」として扱われるかもしれない「ワトソン」を、今、一緒に生きたこの時代だからこそ、もっと知ってみてはいかがでしょうか。
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