- 作者: ディーン・R.クーンツ,Dean R. Koontz,大出健
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1996/07
- メディア: 文庫
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常々思うに、作家というのは世界でもっとも残酷な人種である。脳内で勝手にどんどん人を殺す。それも、どんなに残酷なシーンにしてやろうか、どんなに失意のどん底に落ち込むように演出してやろうかと、頭の中でそういった世界を作り上げていく妄想家だ。
私は本書の著者のことを知らないが、売れっ子の作家とのことだ。その大先生が、売れる小説を書くときの秘訣を教えてくれる。最後は「読んで読んで読みまくれ」と締めくくる「最終問題100満点!」みたいなクイズ番組のような印象を受けないこともないが、それでも本書の中には、ストーリー(小説に限らず様々な演出としてのストーリー)の組み立て方の極意が満載だ。
印象に残った点をいくつか紹介しよう(超意訳)。
・ツカミ重要!テンポ感よく巻き込め!
・やるなら本気でやれ!取り組む姿勢。調査。etc
・主人公は徹底的にいじめまくれ。
・必然的たれ。思いつきで多彩なイベントが脈絡なく発生するのは散漫。
特に、イベントの発生ポリシーについては参考になる。本書で例示されたシーンはこういうものだ。
「主人公が、1分でも遅れたら人生が大きく変わってしまう場所に向けて車を飛ばしている。そのとき、目の前に200両編成の貨物列車がゆっくりと通り抜けていき、前に進めない」
この貨物列車によって主人公は危機に陥るので「いじめまくれ」のポリシーにも合致しているが、これは単なる偶然であり、「なにか遅れるシナリオを作りたかったから列車を登場させた」に過ぎない。読者の共感を得るには、危機は主人公自身の行動によって引き起こされるものであるべきだというのだ。プレゼンテーションやその他人生上の演出でも使えそうな教訓ではないか。 そう、「何かを発生させれば良い」というわけではないのだ。
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