「そういえばそんな会社の名前を聞いたことがあったな」という程度の認識の私にとっては、あまりリアルを感じながら読むことができなかったようです。
こういう場合、読み手にとっては内容がフィクションであるかノンフィクションであるかは、関係ありません。そんな姿勢での読書の中、本書に描かれた馬雲像は一般的な「紙上で設定された、アイデアに満ちあふれ、行動力のある、パワフルなヒーロー」となってしまいます。
もちろん、本書に書かれているような事が作り話ではなく現実に起こったことだという事は真実でしょうから、そんなヒーローのような強さ(時に浮沈)を持つ人はすごいのだな、と思いました。
「リーダーは岐路に立った時に権力を自らに集中させ、平和な時期は権力を手放すべきだ」
との言葉には、大きくうなずきました。また、清朝末期の商人の言葉として「もしあなたがある県の状況を理解したら、その県での商売を始めなさい。一つの省を理解したら、その省での商売を始めなさい。天下の状況を理解したら天下の商売を始めなさい」が紹介されていました。
身近な、あるいは、今できる規模のものから始めて、しかしそこで終わってはいけない、最後には天下を目指せというこの言葉は、
・まず最低限のできることを「きちんと」やろう
・でも、それが出来たからって安心するな、満足するな。本当にやるべきことはその先にある
という私のポリシーの一部とも合致し、読みながら大きくうなずきました。先を目指さないのも悪だけど、途中をすっ飛ばして先が出来ると思っているのは、思い上がりというものです。
本書のおすすめ度については、相手を選ぶかな、というところでしょうか。おそらく、アリババ社について何らかの思い入れがある方ならば、もっとちがった読み方ができたことと思います。
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