- 作者: 生田哲
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2009/08
- メディア: 単行本
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これはおもしろい!電車の中で読みながら、久々に乗り過ごしてしまいました。
従来は、脳の各部位にはそれぞれ固定された役割があり、そこが損傷したらもうその部分の機能(たとえば右手を動かすとか)は回復しないと思われていたが、実際にはもっとアベイラビリティは高くて、その機能を実現したいという思い(訓練)があれば脳の別の部位がその役割を果たすようになるとのことだ。
片手が麻痺した場合に、もう片方の手が使える時にはいつまでも麻痺した手は使えないが、健常のほうの手を結わえ付けるなどして利用できなくすると麻痺した側の手を操作するための脳内の組み替え(というのか学習というのか)が起こって、回復してしまうという事例が、興味深い。
ピアノを弾いているイメージだけの群とフィジカルなトレーニングの群の対照実験の結果は、「イメージ重要!」という私の経験上の印象を裏付けるものでもあり(速いパッセージを吹けるようになる最短経路は、ひたすらうまくいく指回りとタンギングをイメージすることだと、経験的に学んでいた)、「やろうと思えばできる」という根性論的ともとれる言葉が真実であることが明らかになった。もっともいわゆる根性論は「本当はやりたくないけど、やるんだ」という思考停止状態にあるので、脳には良い刺激を与えているとは思いがたいけれども。 ここでいう「やろうと思えばできる」は「心の底から、それを実現したいと思う」ことなのだと私は考えている。
脳は歳を取っても新しい細胞が生まれ続けているし、ちょっとしたトレーニングで、いままであまり使っていなかった部分が発達したりもする。「昔取った杵柄」とばかりに、一旦他の用途に転用された脳の機能でさえ以前の働きを即座に思い出したりする。人間の持つ能力の可能性の大きさに夢を感じる話が満載の本書だった。
同時に、どのような装置かしらないが、「脳のある部分の機能を外部からオフにする」装置もあるようで、結構マインドコントロールって既にできているのかな、という恐ろしさも感じた。
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