sakaikの日々雑感~日常編

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企業内人材育成入門

 

企業内人材育成入門

企業内人材育成入門

 「これはすごい」が第一印象。 自分の経験だけを元に高進を育成する姿勢を「私の教育論」と断罪している(本当は「俺様教育論」とでも言いたかったに違いない)。企業全体の教育システムを構築するためのには「限定的な一事例」を根拠にしてはならない。「心理学、教育学、経営学等の関連書科学の基礎理論」を基に、「人材教育に関する知のありようを俯瞰」する必要がある、と。 これだけの内容が「はじめに」に書かれているのである。 期待を煽る。


 本文に入ってもその期待は裏切られない。「こういうことをやりましょう」「こういうのを作るといいですよ」的な、よくある「ハウツー教育」本ではなく、その根底にある考え方をしっかりと押さえて解説していく姿勢が非常に好感。

 細かい話は多岐に亘るので、ここではひとつだけ、モチベーションコントロールに関してとても印象に残った言葉を書いておきたいと思う。セグマリンとメイヤーの実験によると、逃げられない状況で犬に電気ショックを与えることを続けていると、実際には逃げられる状況になっても逃げようともしなくなるらしい。 仕事の現場でも同様の事が起こりうる。 自分でコントロールできるものに対しても(過去の経緯などで)できないと思いこんでしまい行動すら起こさないといった事象である。

これを「学習性無力感(Learned helplessness)」という。 れすねす、という発音の部分が面白くて印象に残ったのだが、これ、常々思っていることである。一定のレベルに達していない人をそのレベルまで引き延ばしてあげるという積極的教育法も必要であるが、頑張った成果を評価せずに否定し続けることでモチベーションを下げること(learned helplessness)も教育者は絶対にしてはならないのである。 もちろん何でも肯定すればよいわけではなくモチベーションコントロールを常に意識しつつ、NGはNGとして「伝える技術」を駆使すべきであろう。 このことを表す言葉に本書で出会うことができて、幸せな気持ちになった。



以下メモ:

・マグレガーのX理論とY理論:怠け者理論と自己実現欲求理論(おおむねマズローの下のほうと上のほうに対応しそう)

アトキンソン:達成動機=成功への接近傾向-失敗回避傾向

・ガニエの九教授事象:「学習者の注意を獲得」「授業の目標を知らせる」「前提条件を思いださせる」「新しい事項を提示する」「学習の指針を与える」「練習の機会をつくる」「フィードバックを与える」「学習の成果を評価する」「保持と転移を高める」

・クランボルツ「計画された偶然理論(planned happenstance theory)」<いわゆる「アンテナを張っておく」と本質は近いか? 「偶然からキャリアを作る "偶キャリ"という言葉」なんてのもあるのか・・・


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