アフォーダンス-新しい認知の理論 (岩波科学ライブラリー (12))
- 作者: 佐々木正人
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1994/05/23
- メディア: 単行本
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人間の「認知」の本質に迫る本書。
非常にわくわくし、興奮しながら読み進めたのであるが、読み終わったあとで、ふと我に返ると、私の中に残ったのは「要するに、視覚(光りによるもの)だけでなく、体中の様々な器官を活用して、物事を見ているのだよ」ということだけ。 「そりゃそうだよな」と思う。あの興奮は何だったのだろう。
ギブソンの実験によると、人間の視覚による認識は「動き」に意味がある。従来は「形」による知覚が重要視されていたが、「動き」言い換えると「変形」によって対象の不変な性質が明らかになるということだ。変化を説明するために、単なる外部からの刺激ではなく「刺激の配列」という概念を用いたという説明も、興味深い。
人間(のみならず生物一般)が自身の身体の大きさを基準にしたモノサシを持っているという実験も面白い。例えば、高さの異なるバーを投影して「登れる」と知覚した高さは、股下の長さの0.88倍であり、狭いスキマを通る時に、自身の肩幅の1.3倍よりも狭いと肩を回して通るようになるとのことだ(「生態学的測定法(エコ・メトリクス)」というらしい)。手を使わずに座れるイスの高さは足の長さの0.9倍、7m先にあるバーをくぐるかまたぐかを判断する境界は足の長さの1.07倍など。
そういった「モノ」が我々に与えてくれる「環境」がアフォーダンスだ。アフォーダンスは知覚者の主観でもなければ、事物の物理的な性質でもない、環境の中に「実在」するのだ、という説明は、やや漠然とはしているが、分かったような分からないような、そんな気分だ。(「自分にとって」の事物の性質であり、それは無意識による主観と言えるのではないだろうか)。
本日記を書くために改めてパラパラとめくったが、総合的には冒頭に書いたような「そりゃそうだよな」なのであるが、個々の実験や考察には、改めてページをめくってみても、非常に興味を惹かれた。
なんだか、不思議な本である。
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