sakaikの日々雑感~日常編

sakaikの日々の雑記。食べ物、読み物、お出かけ(旅行)などなど

プロの学び力


プロの学び力

プロの学び力


 ビジネスの世界では学ばなければならないことが次から次へと押し寄せてくる。「学び」が早い人ほど有利に,質の良い成果を挙げやすくなるのは自明であろう(もちろん「学び」は単なるインプットなので、それを自分で咀嚼して新しいものを生み出すことこそが「プロ」であると本書も説いている)。

 本書はまず「学び」について、学校での勉強と社会での勉強を 「チャイルドエデュケーション」「アダルトラーニング」と分類して、まったく異なるものであるとして取り扱っている。他から与えられ試験に合格することを目的としたチャイルドエデュケーションの手法は、社会に有用なアウトプットを出すことは難しい。


 また本書の考え方の骨格となるのは以下の「学びの4段階」だ。

1.概念の理解 「知ってる」レベル
2.具体の理解 「やったことがある」レベル
3.体系の理解 「プロとして一応できる」レベル
4.本質の理解 「教えられる」レベル

 チャイルドエデュケーションでは第2の段階までで試験突破できるので、ここで学習をやめてしまう人が多いという。2から3は意識の持ち方の差だけで実はそれほど高い壁ではない。もう一歩踏み込んで学習(自ら考えるという行為も学習に含む)すれば良いのに、という著者の主張は、私も周囲を見て常々残念に感じている点であり、共感した。


 また上司を例にとり、3のレベルの上司は部下が困ったときに代わりにやってあげることしかできないが4のレベルになると適切な助言等により部下自身を育てることができる、という話には膝を打った。まさにその通りである。


 後半には様々な具体的な手法が紹介されているが、本書を読む人にはこの部分にあまり感心しないで欲しい。本書の本質は前半ですべて言い表されており、後半は具体例(あくまで「例」である)によりその「本質」をよりイメージしやすくなる補足だと捉えて読むことこそが、本書の趣旨をつかんだ読み方ではないだろうか。


 本書の著者はIBMビジネスコンサルティングサービスの清水久三子氏。 女性著者のこの手の本というと「私は女性だから(男性には気づかない)こんなことに気づく」「女性ならではの(男なんぞにはできない)こんなことができた」などと、文中の男女を入れ替えたら大騒ぎになりそうなことが平気で書かれているレベルのものが多く閉口するのであるが、本書は性別を感じさせない(男らしい、という意味ではない。性別を超えた本質を説いているということ)、まさにプロの「伝える」力を見た気分である。

 私が常日頃からしばしば口にするキーワードである 「プロ」「本質」を、本書ではとても大切にしている。同じものを大切にしている人どうしが感じられるある種の心地よさを本書に感じた。